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「ちょっと! 兄貴どうしたのか説明してくれるんでしょ!?」
「んーまぁ……」
兄貴は言葉少なめに返す。
「なんで兄貴の髪そんなオールバックになってんの! 松永って誰! なんで兄貴なんて呼んでるの! なんで渡る世間は鬼ばかりなの!」
「………槞架……渡る世間は厳しいんだ。甘くないんだ、だから鬼」
「私のおふざけに付き合うなッ!!」
バキッ!!
「ぐふっ!」
私の突きが兄貴の腹を直撃する。
「………ごめんなさい」
「よし」
私は話を続けた。
「で、何がどうなってるわけ? 今日柔道の練習にいったんじゃないの?」
「あ、柔道? あそこ辞めた☆」
「辞めたの、あっそう……………ふーん……………辞めたぁ!? 柔道を!!?」
私の頭に衝撃が走った。
その日最初の衝撃だ。
「なんかぁー、あんまり儲かんないしぃー、それでもっと儲かる仕事みっけたんだよー」
「……言ってみろ」
私は息をのんだ。
「ヤーさん☆」
――――回想終了。
「あ゛――――ッ!!! なんで!? どうしてこーなんのッ!? 何で将来有望な柔道の選手が転職してヤーさん? わけわからんにもほどがあるわッ!!!!」
バイクに乗りながらでも私の声は響いた。
しかしパトカーには届かない。
一向になりやまないサイレンのせいだ。
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