狂イザクラ。

12/22
前へ
/85ページ
次へ
消え入りそうな、それでいてのんびりとした声で男が呟いた。 古い小説に書かれていたのを昔読んだ気がする。 『桜の木の下には死体が埋まっている』 「誰も埋めないなら・・・僕が埋めちゃおうかな・・・」 またのんびりした声で言うと、男はほんの少しだけ口角をあげた。 その笑みに俺の背筋は凍りついた。 コイツは危ない・・・。 本能は今までにない大音量で危険信号を発令する。 その場を離れたいのに身体が動かない。 本当に麻痺してしまったようだ。 あれ程までに憧れ続けていたはずなのに、この時ばかりは喜びより恐怖が勝った。 男はゆっくりその場にしゃがみ込んで上目遣いに俺を見た。 怖い・・・ だが見とれるほど美しい・・・ 「僕のこと怖い・・・??」 男はあののんびりした声で俺に問い掛けた。 俺は声が出せない。 「ふふ・・・はははは・・・」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加