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男は視線を俺から地面に移すと、肩を震わせて笑った。
まるでとり憑かれたように笑いつづけた。
異常だ・・・。
男の姿は狂気に満ちていた。
急に笑い声がやんで、男はまた無表情に俺を見上げる。
そして俺の膝に手を置いた。
ズボン越しでもわかるほど男の手は冷たかった。
「お兄さんさ、本当は歩けるんでしょ・・・??」
・・・!!!!
心臓が急に速く鼓動を刻み始める。
口から心臓が飛び出るとはよく言ったものだ・・・
ハッキリしない意識の隅で他人事のようにそんな考えが通り過ぎて行った。
「まぁ、いいや・・・」
男はゆっくり立ち上がると手の平をヒラヒラさせ、
「さよーならー」
とけだるそうに言うと、背を向けて歩き出した。
公園の花壇の縁に上がり、バランスをとりながら楽しそうに歩いていく。
その姿が闇に混じって見えなくなるまで、俺は男の背中を見送った。
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