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あの夜からしばらく経った。
あの男に遭遇することを恐れ、公園には近づけなかったが、夜中の冒険は相変わらず続いていた。
今では体力もついて、より長く車輪(あし)を進められるようになってきたし、技術も数段上がった。
俺はこの数時間だけ本当の姿でいられるような気がしていた。
公園に差し掛かった。
ふと、桜の木を見に行こうと思った。
そろそろ蕾が芽吹き、桜が咲き乱れている頃だろう。
あの男がいるかも知れない・・・。
そんなことは頭の隅に追いやられていた。
日の経過と共に記憶や恐怖感は薄れるのだろうか・・・??
公園の敷地内に入ると、強い風が吹いた。
一瞬怯んで目を細める。
風に乗って飛んできた桜の花びらが一枚、俺の頬についた。
花びらを指先でそっと挟んで目の前に翳す。
淡い・・・薄紅色・・・。
「お揃いだね」
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