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「あんた、何者だ・・・??」
ずっと気になっていたこと。
俺は怖ず怖ずと言葉に出した。
その時、また風が吹いて桜の花が散った。
淡い薄紅の粉に囲まれた彼はとても美しかった。
「キョウ」
薄紅の隙間から声がした。男は静かに自分の名前を告げた。
それ以上もそれ以下もない。
『キョウ』とだけ。
「お兄さんこそ何者・・・??」
キョウの流し目が俺を捕らえた。
緊張が走り、喉の奥がカラカラに干上がった。
「広樹(ひろき)」
やっと声を絞り出した。
キョウと同じく名前だけを告げた。
「いい名前だね・・・」
キョウの瞳は相変わらず広樹を捕らえている。
広樹もキョウから瞳を離さない。
いや。離すことができない・・・
キョウの瞳は長い前髪が邪魔をしてよく見えない。
しかしその隙間から漆黒の瞳は妙に輝いてみえる。
「ふふ・・・」
またこの前のようにキョウが笑い出した。
相変わらず異常な笑い方だ。
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