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「狂ってない人なんてこの世にいないよ・・・」
キョウは広樹の耳元で囁いた。
白い肌に妙に赤々とした唇が浮かび上がり、吊り上がった口角はナイフで切り付けられたようにクッキリしていた。
「狂ってるって言われる人は狂いが他の人よりも大きいだけ・・・」
キョウは黒づくめの服の袖から白い手の平を出した。
「僕に言わせれば、普通の顔して過ごしてる奴の方がよっぽど狂ってるし・・・壊れてる・・・」
キョウは広樹の頬に触れた。
ひんやりとした手の平の感触を頬に感じると、広樹の目の前が真っ暗になった。
強い風が吹いて、最後の桜が散った・・・。
あとに残されたのはひっくり返り、カラカラと虚しく車輪の回る車椅子。
そしてどういうわけか、散ったばかりの桜の木が鮮やかな色で満開に咲き誇っている。
それからこの公園の桜はどんなに季節が巡っても常に新しい花をつけているという。
それを人はこう呼ぶ。
狂イザクラ・・・
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