狂イザクラ。

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ある夜、俺は思い立って車椅子のまま外出することにした。 近所の人間や他のマンションの住人とは殆ど面識はないが、このことが明らかになるのは避けたかった。 滅多に被らないキャップを目深に被り、人目を避けてマンションを後にする。 春先の風はまだ冷たい。 俺は襟を直し、車輪を回した。 この時間はもう殆ど人の行き来はない。 向こうから飲み会の帰りと思われる集団がやって来る。 皆一様に不思議そうな顔をする。 俺に投げ掛けられる心配そうな、憐れみや同情の視線。 込み上げて来る今まで感じたことのない高揚感と幸福。 今日は外へ出て正解だったな・・・ 喜びにまかせて車輪を走らせる。 部屋のなかでは味わえない開放的な外の世界。。。 時に自由を感じ、時に不便さを感じて、俺は満たされていく・・・
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