14人が本棚に入れています
本棚に追加
ある夜、俺は思い立って車椅子のまま外出することにした。
近所の人間や他のマンションの住人とは殆ど面識はないが、このことが明らかになるのは避けたかった。
滅多に被らないキャップを目深に被り、人目を避けてマンションを後にする。
春先の風はまだ冷たい。
俺は襟を直し、車輪を回した。
この時間はもう殆ど人の行き来はない。
向こうから飲み会の帰りと思われる集団がやって来る。
皆一様に不思議そうな顔をする。
俺に投げ掛けられる心配そうな、憐れみや同情の視線。
込み上げて来る今まで感じたことのない高揚感と幸福。
今日は外へ出て正解だったな・・・
喜びにまかせて車輪を走らせる。
部屋のなかでは味わえない開放的な外の世界。。。
時に自由を感じ、時に不便さを感じて、俺は満たされていく・・・
最初のコメントを投稿しよう!