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無視をされても男は諦めずに感謝の言葉を続けた。
これで故郷で待つ婚約者に再び会うことができるとか、仲間達の無念をみんなに伝えることができるとか。
しかし男の熱い想いを聞いても、命の恩人達は相変わらず無反応だ。
意図的に聞かないようにしているのだろうか、でもなぜ?
…きっと彼らはシャイな性格なんだろう。私の年の離れた弟もそうだからよくわかる。
弟達はしっかりと母の看病ができているだろうか?ふと、そんなことが頭をよぎる。
これからはまた家族一緒に過ごせるのだ。私の新しい家族とともに。
感謝してもしきれない。
命の恩人である彼らには、せめてお礼を形にして受け取ってもらいたい。
そうすることで、私の心はさらに喜びに満たされるだろう。
「6…5…4…」
「君達は―」
「1…0。…時間」
「え?」
パンッという渇いた音が辺りに響いた。
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