時の番人

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空を覆うどす黒い雲。そこから流れ落ちる無念の涙。 昨日まで雲一つ無く青く澄んでいた空は、突然の脅威によって悲しみに支配されてしまった。 辺りを漂う硝煙の香り、燃え盛る炎、所々に刻まれる戦闘の爪痕。 それらは戦闘の激しさを表していた。 仲間は皆、動かなくなってしまった。 おそらく皆もう旅立ってしまったのだろう。 悲しむことはない。こうなることは分かった上で参加したのだ。 心配することはない。私もすぐに皆の後を追うことになるであろうから。 人と人との争いは昔から続いてきた。 そしてその度に歴史が作られてきた。 犠牲ではない。私も歴史を作る礎となれるのだ。嬉しいことではないか。 …だがそれは人の歴史だ。 人によって作られてきた歴史だ。 “あんなもの”によって作られるものではない。 一体、なんなんだあれは? だが、一つだけわかる。 あれは… “人”ではない。
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