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そして僕等の考えた作戦はこうだ。
まずは僕と戦士が壁となり、その後ろで僧侶が加護魔法を使い僕等をパワーアップする。
その後に僕だけが前線に出て魔王と肉弾戦を挑む(剣は使うけど)。それを魔法使いと僧侶が援護してコツコツとダメージを与える。
万一魔王が二人に向かって行っても戦士が壁となって二人を守り、その後で僕が魔王の背後に攻撃を仕掛ける作戦だ。
言ってしまえば僕が魔王に負けたら即終了の作戦なのだ。だから僕は防御に徹する。
勇者になってからの一ヶ月間、余計な筋肉は付けず反射神経と体の柔軟性、そして俊敏さを鍛えまくった。その特訓の成果を今日見せる。
大丈夫。絶対に勝つ。
僕がそう皆を励まそうとしたその時だった。
「フハハハハハハ! 本日お集まりの紳士並びに淑女、その他チビっ子である小市民(リトルピープル)諸君!」
窓ガラスが割れそうになる程の大音響が空から聞こえた。この声は、魔王だ。
彼女は昼間、空を飛びながらこの大音響で僕等の決闘の事を宣伝して回っていた。
ひょっとしたら隣町にまで聞こえるんじゃ無いかと言うくらいの大声がこれだけの人を集めたのだ。
「あと五分で君らの勇者一行がケチョンケチョンにされてしまう訳だが、その絶望を目の当たりにする覚悟は出来たか?」
魔王がそう言うと観客達はワーッと歓声を上げた。
「魔王命!」と書かれたプラカードを持った人、親指を下に向けてブーイングをする人、色んな人がいるけど皆一様に笑顔だった。
何となく時計を見ると時刻は五時五十五分。現代の魔王は五分前集合も出来る時間に厳しい魔王なのか。
「さて、盛り上がって来たし」
魔王に呆気に取られる皆に僕は声をかける。
「戦って、勝ちに行こうか」
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