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「魔王ォ! そんな大口を叩けるのも今の内だぞ!」
グランドに出て、出来る限りの大声を出す。観客達の視線が僕等に集まるのが分かった。
「今度こそ、善神スプンタ・マンユの加護を受けた勇者、上山真がお前を倒す!」
僕のその言葉を聞いてまた観客が歓声を上げる。僕はと言うと噛まずに言えてホッとしていた。
「フハハハハ! その言葉、そっくりそのまま返してやろう!」
空から降りてくる魔王。
見える高さまで降りて来て分かったけど、朝着ていた可愛いげのあるパジャマでは無く「いかにも魔王」というような服装だ。
「久しぶりだなぁ、勇者と戦うのは」
魔王は小さく僕に向かって呟いた。
「せいぜい私を楽しませてくれよ?」
目の前にいるのは、もう朝に見たパジャマで説教をかましたお姉さんでは無く、悪役のセリフを堂々と言い放つ本物の魔王だった。
魔王が右手から炎を出すと(朝パンを焼いていた炎だ)辺りが静寂に包まれた。
魔王はその炎を上に投げた。
「あの炎が地面に付いたらスタートだ」
あぁ、不意打ちを仕掛けて来たらどうしようと思っていたけど、紳士的な奴だった。良かった。
そして炎がゆっくりと降りてきた。
真っ赤な炎がゆらゆら、ゆらゆらと宙を舞い……
地面に付いた。
かくして、決闘が始まった。
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