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「まずはお前だ! 戦士!」
魔王が遠野さんを指差す。二人から少し離れて遠野さんは剣を構える。
「新米戦士に相応しい相手を用意してやろう。スライムだッ!」
魔王がそう宣言すると突然遠野さんの前に水の球体が現れた。これがスライムだとしたら、破格の大きさだ。直径二メートルはある。見た目もドロドロと言うよりプニプニだ。
「スライムくらい私にかかればお茶の子サイサイよッ!」
遠野さんはそう叫んでスライムに切り掛かった。
するとスライムは真っ二つに割れた。
所詮スライム。新米戦士の相手にもならない悲しい役回りだ。
「まぁざっと、こんなもん……」
その時二つに割れたスライムが遠野さんを挟みこんだ!
「きゃ……!」
そして瞬く間にスライムは合体し、遠野さんを包み込んでしまった。
「ほぇ……?」呆気に取られる遠野さん。
「安心しな。息は出来るから」
魔王は丁寧に説明してくれた。変な所で律儀な奴だ。
遠野さんはと言うと、息は出来ても全く身動き出来ないみたいだ。魔王の第二形態の前に早くも一人脱落してしまった。
「さて次はどい"い"ぃ"い"ぃ"ぃ"」
再び、魔王の情けない声。近藤さんの雷魔法だ。
「上山くん! 大技行くから離れておいてくれ!」
「分かりました!」
魔法使いの大技は呪文を唱えるのに時間がかかるが、近藤さんはその時間を相手を麻痺させる事で確保している。
「風の精よ! 空の守護者よ! 善神との盟約に基づき、我が刃となりて敵をうちたまう!」
近藤さんは事もあろうに、最後の所を噛んでしまった。
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