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それでも魔法は発動した。
呪文を間違えても噛んでしまっても、風の精が理解出来れば魔法は発動するのだ。
凄い魔法使いなら「例のアレよろしく」と言っても発動するらしい。
とりあえず、魔法により現れた八つの竜巻が魔王を囲い込み、砂埃をあげながら魔王に近づいていく。
「はぁぁっ!」
近藤さんが叫ぶと八つの竜巻は一つの巨大な竜巻になった。その竜巻は地面を抉り、砂や土を空高くまで吹き飛ばし、出店のテントも吹き飛ばされそうになっていた。
さすがの魔王をこれだけの攻撃を受ければただでは済まないだろう。そう思った時だった。
「確かに」
信じたく無かったけど、後ろから声がして、何かが倒れる音がした。
「 受 け れ ば ただじゃ済まなかったね」
振り向けば、そこには無傷の魔王と倒れ込んだ近藤さん。そして動揺を隠せない下崎。
「私は異世界から来てるんだぞ? 別次元に逃げることも出来ないと思っていたのか?」
なんて事を真顔で言い放つ魔王。
……こいつ、もう目茶苦茶だ……。
「ともあれ、魔法使いは眠らせた。あと二人って言いたい所なんだけどな」
魔王は下崎を見た。下崎は怯えているのか、杖を構える事も逃げる事もしない。
僕が逃げろと叫ぶ前に「お前はこっち側の人間だから、今日は勘弁しといてやるよ」と下崎に言った。
それを聞いた下崎はへなへなとその場に崩れてしまった。
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