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「フハハハハハ! 見ろ! 愚かな人間ども! 今日も世界は闇に包まれている! フハハハハハ! 見ろ! 愚かな人間ども! 今日も世界は……」
毎朝の響く声を聞いて、私は朝が来たことを実感する。そして朝になればいつも思う。人間界の朝は早い。
ポンと目覚まし時計を叩いて、架空の魔王を黙らせる。値段はかなりの物だったから壊さない様に慎重に。だけどこの目覚まし時計は素晴らしいチョイスだったと思う。魔王である私にピッタリだ。
布団から起き上がり、ピンク色のカーテンを開ける。空は雲一つ無い快晴で、世界は闇に包まれていない。五畳一間の私の城さえも、11月の日差しに照らされる。
「……まぁ、たまには光を見せてやらないと人間どもも悲しむしね」
それにこの天気なら洗濯物も良く渇くだろう。
その時、足にスリスリと何かが触れた。これは……。
「おはよう、ケルベロス。良く眠れた?」
モコモコとした毛につぶらな瞳。こいつは柴犬のケルベロス。5年前に魔王を始めた時からの相棒だ。
私がケルベロスを抱き上げると、ケルベロスは私の顔をなめてくる。これが私とケルベロスの挨拶だ。
「よしよし。朝ご飯にしような」
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