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六時半。
西の空が夕焼けで赤く染まる頃に私はスライムの中から救出された。
旦那と息子と私の友達がロープをスライムの中に押し込んで私を引っ張り出してくれたのだ。
スライムの中は確かに息は出来たけど、体中圧迫されて痛くて動けなくて、ロープを掴むために手を握るのも一苦労だった。
救出されて初めて分かったけど観客の盛り上がりは凄かった。
同級生か高い声で祝福する女の子に囲まれて戸惑っている上山くん(彼は所謂イケメンだ)。
市役所の上司だろうか、ガハハと笑う大柄な男性に背中を叩かれて少し困った顔をする近藤さん。
沢山の友達に囲まれて泣きじゃくる理沙ちゃん。
取材に来ていたローカルテレビ局のインタビューに答える魔王。
そして家族とその友達に囲まれる私、遠野美和子。
「ごめんね、負けちゃった」
せっかく皆で応援してくれたのに、私達はそれに応える事が出来なかった。
そんな訳で魔王に負けて悔しいというより申し訳無い気持ちの方が大きかった。
「でもおかあさん、かっこよかったよ」
七歳になる息子は無邪気にそう言ってくれる。
「美和子さん、本当に素敵でしたよ。私も善神さまの加護を受けようかしらねぇ」
「あなたには無理じゃない?美和子さんだからあそこまで戦えたのよ」
と言ってくれるのは私の井戸端会議の仲間の武藤さんと佐伯さんだ。ここしばらくの間、上山くん達との特訓で話せて無かったから、また今度土産話をしよう
「とにかく怪我が無くて良かったよ。お疲れ様」
最後に労いの言葉をくれたのは私の旦那。二十歳で結婚して早くも九年たつけど、今でも私達家族の事を一番に考えてくれる理想の夫だ。
「ありがとう、みんな」
心の底からそう言って、幸せを実感して、
「お腹空いたからタコ焼き買ってくる。皆で食べよ!」
元気一杯に叫ぶ。私には幸せだから、皆を元気に出来る様に。
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