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「お? 戦士じゃないか。一人でどうした? ヒマなのか?」
校門を抜けた所で私を呼ぶ声がした。魔王だ。
「あ、えと、その」
「ヒマなら付き合ってよ。私も一人なんだ」
ビビる私の手を強引に引っ張る魔王。ひょっとして人気の無い所に連れていかれて食べられたりするんだろうか。
「……あのな、私は魔王だけど鬼じゃないんだ。そんな事しないよ」
そう言えば魔王は心を読めるんだった。
さっきの戦いで魔王は上山くんの心を読んでそれに対して色んな事を言ってたけど、傍から見てる立場としてはサッパリだった。
「とにかく私の城まで来いよ。ちょっと聞きたい事もあるんだ」
聞きたい事?
「ふ~ん、異世界からやって来た魔王でも分からない事ってあるんだ」
ちょっとからかう口調で指摘すると、
「う、うるさいな! 私は人間世界に来てまだ五年しか経ってないんだぞ! 何もかも知ってる方がおかしいだろ! 」
何故かムキになる魔王。
さっきの戦いであれだけ傲慢かつ不遜な態度だった「魔王」が、今はちょっとした指摘でムキになって、まるで女子大生の姿をした子どもみたいだ。
「バカにするな! 便宜上人間の格好をしてるけど二千年以上生きてるんだぞ! ニホンは年上を敬う国なんだろ!? 私は大先輩なんだぞ! ちょっとは敬え!」
……心が読める魔王との会話は大変だった。魔王の「城」に着くまで私は一言も喋れなかった。
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