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 お母さんの怒鳴り声が止む。それにあわせて僕たちも言い争いをやめて家事に集中した。  仕事を終わらせて部屋に戻ると妹がじゅうたんの上に力なく倒れている。だが入ってきたのが僕だとわかるとゆっくりと起き出す。亜美は抵抗せず倒れ、立ち上がる力もないと見せつけることでお母さんの気をそらし、生き残るための知恵を身につけていた。  お母さんがお風呂に入り、告げ口をするお姉ちゃんもいないことを確認すると給食の残りの食パンをあげる。  もらったパンを見つからないうちに、と噛まずに胃に送り込んでいる姿を正視できずに背を向けてしまった。
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