12人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものことだけど、ベッドでファミコンがむくれてる。
「そろそろ機嫌直せって、《美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負》でもやるか?」
「……………やんない」
普段のファミコンなら「アンコウのさばき方はまかせろー!」とか言って、飛びついてくるはずなんだが、本当に機嫌が悪いらしい。
「仕方ないな。ファミコンは遊ばないみたいだし、ソニックでもやるか?」
隣に座っているやたらフリフリのついた黒い服の少女に声をかける。
「別に……」
どこかで聞いたことのあるようなクールな台詞を言っているが、目が輝いている上に右手にはもうソフトが用意されている。
こいつはあまり喋らないので分かりづらいが、ファミコン並に感情豊からしい。
友人の引越しを手伝った時に「お前ゲームやるだろ?やるよ」などと言って押し付けられてしまったこいつだったが、大人しくしているし、ファミコンと一緒で食費もかからないので特に困ることはなかった。
あー、いや、違うな。
一つだけ困ったことがあった。
ファミコンはこいつが来て以来機嫌が悪く、大好きなクソゲーにも手をつけないという有様だ。
発売時期が近かったからライバル意識でもしているんだろうか。
「そのまま当たると死んじゃうからリングとって」
「ああ、悪い」
ゲームを始めて数分経って、初めて気づいたがメガドライブはゲームの時は饒舌になるらしい。
おまけに何故かスパルタだ。
最初のコメントを投稿しよう!