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騎士様は颯爽とマントを翻(ヒルガエ)し、一分の隙も無い動きで宝物庫の奥へ進んだの。
カシャ‥
鎧から小さな音を起てて、騎士様は屈むと僅かに髪がゆれました。
何だか笑っているようだわ?
「望みの品が有りましたよ。
この宝物庫の1番の古株だ。
そして、長い歴史を見詰めてきた由緒有る品だ。
場合によっては王家の徴(シルシ)となり、大変な価値が有る。
命が惜しけば、むやみに人に見せない方が良い」
それはまた恐ろしいこと。
けれど
手に取った花瓶は、冷たい銀製なのに軟らかな印象で、
‐やっぱり他の物を‐
なんて言えはしなかったの。
「では下がって、仕事に取り掛かりなさい。
庭の花は庭師に言って、姫様の許可が出れば、好きな花を切ってくれるだろう。
王子の衣装の参考にと口添え忘れることなく。
では失礼」
「ありがとうございます」
威圧的なのに親切な騎士様と別れて、私は使用人部屋へと急いだの。
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