三題噺

食わず嫌い

ぼくにはどうしても嫌いなモノがあるんだよね、それは『カレーにはいった』ニンジンなんだよ。カレーにさえ入っていなければ普通に食べられるのに。
ぼくに何でこんな変な食わず嫌いができたか話してみようか。―

夏。いやになるほど暑い夏休みの真ん中らへんの１日だった。
その日は、外に出る用事もないし、出るつもりもなく、エアコンをガンガンにかけてパソコンと向き合ってネットサーフィンをしいた。
お気に入りのサイトを巡っていると気になる文字が目に留まった。
『ニンジンに秘められたパワーこれで夏バテ解消だぜ！』
･･･あ、怪しい。しかし、この時何を血迷ったか好奇心でクリックしてしまった。
そして、画面に写し出されたのは『夏バテ解消ニンジンカレー』のレシピだった。
この時気まぐれに食べてみたいと思わなければ･･･だが、残念なことにレシピ通りにカレーを作りはじめてしまった。
材料は、カレールー・ニンジン・ジャガイモ・肉たいして珍しいものを使うわけでもなく。家にあるものだけで十分足りた。
レシピには妙に細かく分量と時間が書かれていてその通りに作っていく。
途中まではいたって普通のカレーだったはずだ。でも、食材を煮込み始めて１２分２９秒レシピに書いてある通りに火を止めたら、いきなり鍋の底からオレンジ色の物体がプカプカ浮いてきだした。
よく見るとソレはもぞもぞと動いている。カレー作りの事を完全に忘れ、恐る恐るソレを菜箸でつまみ上げるとオレンジ色のキノコのキグルミを着た小さな子供が何かわめいている。
そしていきなり、プスンという音がしたとおもうとオレンジ色の物体は消えていた。

―こんなことがあったからその日は、自分は疲れてるんだと思って寝たんだよね。
そしたら次の日起きて台所に行って鍋を見てみると具が全部無くなってルーだけしか残ってなくて、しかもルーも３分の１ぐらいしか残ってなかったんだよ。
それで、何か気持ち悪いなと思ってもったいないけどルーは全部捨てちゃった。そんなことがあってカレーの中に入っているニンジンを見ると思い出して食べれなくなっちゃったんだよね。
その時は、何でオレンジ色の物体が消えたかわかんなかったけど、今考えてみると多分レシピ通りにしなかったからだと思うよ。
でもできないよね、いくら小さいからって人の形して動いてるものをすりつぶすように混ぜるなんて･･･