11階の華子さん

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妙に月が赤く染まっていた。 その日は朝から取引先での大事な仕事に失敗して上司に怒られ、一日中ブルーな気分で過ごしていたので始めは疲れているのかもしれないと思った。 いつものように煙草をふかしながら帰路をたどり、マンションのエレベーターに乗って10階のボタンを押そうとした。 「おかしいなぁ。故障か。」 10階のボタンが押しても押しても反応してくれないのだ。 「おや、11階?このマンションに住んでもう一年近く経ったけど、11階なんてあっただろうか…。」 私は興味本位で押してはならない11階のボタンを押してみた。その時は階段を使って10階に降りればいいやなどと軽い気持ちであった。
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