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ゼツベルが死に、
その洞窟の保安部による制圧は、そう時間がかからなかった。
老人は、捕まり、アイスとクールは懸賞金をいただいた。
そして、2人は最初の飯屋に戻り、祝杯を上げた。
『乾杯』
2人は、声を揃えて、グラスをぶつけ合った。
クールはミルク、アイスは葡萄の果実酒を飲んでいた。
「でもスッキリしないなあ」
クールは小さく言葉を漏らした。
アイスは、果実酒に口をつけ、首を傾げた。
「何がです?」
「それがね」クールは頬をポリポリ掻きながら言った。「あの捕まった老人は、黒幕はこの街全体だ、なーんて言ってたんだけどね。今回、保安部に捕まったのってあの洞窟に居た人だけじゃない。それがね。どーも納得がいかなくて」
「ふむ」アイスは顎に手を当てた。「それは単に、その街が計画の顧客だったという話しではないのですか?実際、あの老人は死なない兵隊を作るが目的だったのですよね。でしたら、それを完成させたら、どこかの軍に売るつもりだったと考えるのが自然です。その客が街の私有軍だったというだけじゃないですか」
「そうかのかなあ」
「まあ、たぶん、そんな所ですよ。まあ、誘拐という罪状が無ければ、別段、強い兵隊を作る事は悪い事じゃないですからね。これより、先は捜査の手は伸びないでしょうぬ」
「そんなもんか」
「そんなもんです」
「あ。それよりアイス」
「何です?」
「この首輪ってどうやって外すの?」クールは首輪をコンコン叩いた。「いい加減、外したくて」
「あーそれですか。……それは外れませんヨ」
「はい?」
「だから、外れません」
瞬間、クールはテーブルに体を乗り出し、アイスの首根っこを掴んだ。
「ええええええええええええ……どう言う事よ?」
「はい。実はその首輪には魔法がかかってて一度はめたら外せない様になってるんです。まあ、一生という事は無いと思うのですが」
「な、何よ。じゃああたしにずっとコレはめてろって言うの?」
「はい。今後の仕事でも発信機や通信機は必需品になると思いますので。丁度よいじゃないですか~」
「丁度良くなんかないわよ。あーもう、お前なんて嫌いだ。どっか消えちまえ」
クールの叫び声が一晩中、こだました。
しかし、彼女はまだ知らなかった。
この街には更に深い"闇"が存在する事を…
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