10/99
前へ
/368ページ
次へ
 変わりに、アリスの手を取って胸に当てさせた。 「私もドキドキしてるんですよ。理由などなく、貴方だから」  人が人を好きになるのに理由はあまり関係ない。  それが生まれ変わった私に与えられた次の仕事なのかも知れない。  身を起こし、戸惑うアリスにキスをしようとした瞬間、鐘の音が聞こえた。  弾かれたようにアリスが立ち上がり、私の手が空をつかむ。 「カミュさん、魔族です。通達です」  その鐘の音は魔族出現を報せるものでしたか。人の楽しみの時間を奪うとはいい度胸してますね……  若干苛立ちながら座り直し、ため息をついて紋章に手をやる。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加