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今日は夏祭りだ。
親友の崎田がどうしても行きたいとごねるので、しかたなく同行した。
崎田は、目当ての鈴木さんの姿を探すのに必死。
でも、こんな人込みの中からたったひとりを見つけだすなんて、可能だろうか。
奇跡でも起きない限り、無理だと思う。
目を見開いて歩く崎田を横目に、僕は手にしたコーラをぐびぐび飲んだ。
僕には別に、目当ての女の子なんていないし。
生徒会忙しいし、恋なんてしてるヒマ…………
僕の思考はそれきり固まった。
向こうから黒い山に埋もれながら歩いてくる、ひとりの女の子。
頭に黄色い花飾りをつけて、友達と笑いながら歩いてくる。
僕のそばにくる。
金魚が泳ぐ青い浴衣に、黄色い帯。
結うには短すぎる髪の毛の中心に、薄化粧を施したきれいな顔。
目が大きくて、提灯の明かりにキラキラ輝いている。
すれ違う瞬間、身体中からドクン、と大きく音がした。
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