恋の始まり。

2/3
前へ
/3ページ
次へ
今日は夏祭りだ。 親友の崎田がどうしても行きたいとごねるので、しかたなく同行した。 崎田は、目当ての鈴木さんの姿を探すのに必死。 でも、こんな人込みの中からたったひとりを見つけだすなんて、可能だろうか。 奇跡でも起きない限り、無理だと思う。 目を見開いて歩く崎田を横目に、僕は手にしたコーラをぐびぐび飲んだ。 僕には別に、目当ての女の子なんていないし。 生徒会忙しいし、恋なんてしてるヒマ………… 僕の思考はそれきり固まった。 向こうから黒い山に埋もれながら歩いてくる、ひとりの女の子。 頭に黄色い花飾りをつけて、友達と笑いながら歩いてくる。 僕のそばにくる。 金魚が泳ぐ青い浴衣に、黄色い帯。 結うには短すぎる髪の毛の中心に、薄化粧を施したきれいな顔。 目が大きくて、提灯の明かりにキラキラ輝いている。 すれ違う瞬間、身体中からドクン、と大きく音がした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加