神の誕生

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 天高くから燦然と輝き、生けるものを治める太陽と導きの光は、今やともにあるのではなく、支配する高次なるもの、大いなる力とし世界の中心に据えられている。  人は己の力など遠く及びもしない存在だと畏敬の念を抱き、より篤く信仰に熱を入れるようになっていた。  信仰は本来持ちうる生の自由を奪い、自らの限界を定めたが、同時に、死を信仰に還すことによりその恐怖を和らげた。  自ら行った戒めと束縛を恩寵と救済と解釈し、太陽と光こそがすべてであると錯誤したときから、我を忘れ、自己の全てを捧げるほど過度に讃美を行うようになっていた。  それは、理知や多様な感情によって抑えられ内在していた狂気の発露であり、人を捨て、絶対のものによる存在肯定を願う証しである。  狂える信仰は理性の箍を外し、定められた限界を越えるほどに想像力を高め、ついに肯定するもの、すなわち神を創造した。
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