契り

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 ――太古、人はあらゆるものを理解した、また、彼らを呑み込むことにより自己という存在を認識たらしめた自然を敬った。  同時に、暴れる力を恐れ、静めるために祈りを捧げると、神を創り、己を救った。  限りある生命を至上のものにするため、自由と生死を太陽に預け、光と安息を手にした。――  過ぎた信仰は愚昧なる行為に及ぶ。  人は自ら創造した神と契約を交わすという暴挙へ出たのだ。  生涯に渡り神への絶対服従と永遠信仰を果たすことを誓い、対価として生の豊饒、死からの救済、幸福に満ちる静寂の地平へ至ることを約束した。  光と安息だけでは飽き足らず、救いとさらなる幸せを得るために己の存在を神に献上し、さらに、永遠と回帰を願い神とともにあることを欲した。  太古、人は神を創造し、契約を交わすことにより生きた。  この契約は後の世に聖なる契りと皮肉られ、最も愚かな行いとして残り続ける。  人は愚の産物と罵るが、正体不明の何かが縛りつけるゆえにただ平伏すばかりであった。  そして契りは、数千年の時を経て、神に挑む英雄が現れるそのときまで続いた。
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