第0-1章~軍人として、兄として、男として

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歩幅を早める藤堂に、懸命に小走りしながらついていく輝。 輝は、息を切らしながらも藤堂に色々問いかける。 輝「ねぇねぇ! 聞いてる!? しばらく日本にいるの!?」 藤堂「しばらくいなきゃならないだろうな」 輝「やったぁ! じゃあさ、今日、うちにおいでよ! 藤堂兄さんのために、私、新しいパスタ考えたんだ!!」 藤堂「そうか。 でも、今日は行けそうにないな。 府中司令部に、京都参謀本部に、後 九条さんにも報告があるし…」 輝「そっ…か…。 じ、じゃあさ!!」 輝の言葉に 藤堂は歩くのを止めて振り向いた。 藤堂「輝……。 輝も、もう立派な軍人であり大人なんだ。 俺の背中ばかりを見るのは………」 藤堂に言われた瞬間、まるで死刑宣告を受けた犯罪者のような顔を輝は、した。 輝「どうして? どうしてそんなこと言うのさ!! 私が5年間、どういう想いで生きてたのか解る!? 他の男は、皆、私の体ばかり見てきて、女は女で私を妬む!! 藤堂兄さんから送られてきた手紙にだって、女物の香水の匂いがしたし! 私って一体、なにさ!!? 私は…………」 輝が最後の一言を言う前に、藤堂が荷物をアスファルト上に落とし、輝を抱きしめた。 輝「藤堂…兄さん…。」 藤堂「すまない。 俺がお前を気にかけていれば、傷付かせずに済んだのに………。 次の赴任先は、国内にするよう九条さんにも頼むから…。」 輝「藤堂…兄さぁぁ…ん」 輝はそのまま、藤堂の腕に抱かれながら泣いてしまった。 国防軍という檻の中で傷づいた血のつながっていない妹と、故郷離れた異国で傷づいた兄。 引かれ合うのは当然だったかも知れない。
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