第0-1章~軍人として、兄として、男として

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九条は、テーブルの上に置かれた藤堂の荷物を、藤堂に断りもなく漁り始めた。 九条「熊さんお人形に、ハーブの香水、それに…こりゃあ…女物の下着かよ!」 藤堂「輝への土産です。 買わなきゃ買わないで、喚くだろうし…。」 九条「…そういや、輝には会ったか?」 藤堂「はい、先ほど」 九条「お前さん、しばらく輝の元にいてやるんだ。 輝の病気は、年々酷くなってる。」 …無理もない。 ……5年程、前まではそんなに頻繁に出るものじゃなかったが、今じゃ些細なことで……。 九条「今じゃお前さんがいなくなれば、直ぐに発作が起きる。 いつもはお前の身分写真を持ち歩かせているから、発作は起きなかったんだけどな…。」 輝の病気とは…。 九条 勉と九条 輝は 実は、血がつながっている親子ではない。 輝が3歳の時…つまり20年前に勃発した第一次南北日本内戦時に、輝の両親、そして誰よりもなついていただろう兄と弟を、北日本軍に目の前で射殺された。 北日本軍の残酷なことは、それだけではなかった。 無抵抗な家族を殺した後、輝だけは幼いという理由で残した。 その後、北日本軍は撤退し、残敵掃討のために入ったのが九条1佐率いる第3普通科連隊。 九条は、そのまま茫然自失となっていた輝を養子として、向かい入れた。 [ちなみに、第一次南北日本内戦で藤堂の母と兄を空襲によって、失っている] その後、輝はまるで人形のように ただ息をして座ってるだけの人間であったが、それを変えたのが藤堂であった。 戦争後、忙しくなった九条と 戦争後、北日本軍への復讐に燃えた 藤堂の父・京鳴。 藤堂京鳴と九条勉は、親戚同士であり、必然的に藤堂 京平 本人が、輝の世話役 兼 兄となるのは時間の問題であった。
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