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漆黒の闇の中、淡い紅が舞っている。
これは何…?ああ…これは桜なのね…
私の一族の象徴、狂い咲きの桜…
ここは何処なのかしら…
ふと前を見る
そこには狂い咲きの桜のようにただただ美しく、氷の様に冷たく、しかし桜の様にどこか暖かく儚い目をした娘がいた。
この人は誰…?
「ああ…そうか、この姿で会うのは初めてであったの」
その声は美しく凜としているがまるで何処か疲れた老婦人の様だった。
ああ…そうかこの方は…
「私は常世にも行けないのですか…?桜様」
桜とはあの巨木のこと…
長い長い間咲き続けた為意思を持ったと言われる哀れな木
フフッ…
桜は鈴を転がした様な声で美しく笑った。
「そなたは妾の話を聞いてなかったのか?生きてみよと申したはずだが…」
彼女は酷く残酷な事を言う…
「理由を…お聞きしてもよろしいですか…?」
自分でも呆れる程弱々しい声がでる。
「生きて自分で考えたもうれ。」
桜は冷たい声で言うとトンッと指で娘の額をつく。
「お待ち…下さ…ま、だ…」
娘は自分の内の“何か”が眠りにつくのを感じ浮上する意識の中必死に言う。
「狂咲の誇りを忘れずにあれ」
そこで娘の意識はプツリと切れた
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