一年…4月●日

10/10
前へ
/20ページ
次へ
『俺』は 風呂を出て髪を乾かし ベッドに仰向けになって倒れ 天井を見つめる。 「音楽……か」 ふと言葉にだす。 時間が経って考えれば あの苛立ちがわかった気がする。 自分で嫌い嫌いと言っていた 音楽を吹奏楽部の演奏によって 再びやりたいっという 気持ちが芽生え始めていたのかもしれない。 それを否定したい 自分もいたんだろう。 母親に啖呵を切って 自分で音楽を切り捨てた。 だからこそ ここで音楽に戻ったら 自分でもわからない『なにか』に負けてしまう気がした。 それが許せない 自分なりのプライド。 それらが 絶妙に混ざり合っていたから 今までは何も考えなかったのかもしれない。 だが 遥の言葉が この均衡状態を打ち砕きやがった。 崩れたせいで 自分でもどうしたらいいかわからず そんな自分に怒りを感じたのだろう。 別に遥を責める訳ではない。 むしろ感謝しているのかもしれない。 このまま何も考えず 野球部に入っていたら 音楽を再びやりたくなった時 後悔していたかもしれない。 だから 早かれ遅かれ こういう事になっていた。 「よしゃ。部活見学で白黒はっきりしないとな」  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加