一年…4月○日

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「亞流斗、待たせてすまん!!」 「遅い、この音楽バカ」 「バカにバカと言われたくねーよ、この野球バカ」 このごつい男は 横須賀 章護(ショウゴ)である。 こー見えても 小さい頃からの幼なじみだ。 『俺』らは学校に向かい歩きだす。 春風が吹くと同時に まだ残ってる桜が舞う。 学校は歩いて10分もしないのだから 手ごろの距離だ。 不意に章護がため息をもらし 肩を落とす。 「また、この見慣れたモジャモジャヘアーと登校するのか……」 「っるせーな。俺だってゴッツい顔を毎日拝むと思うと、反吐がでる」 『俺』の髪は癖っ毛である。 そんな髪を伸ばし 整えもしない。 軽くボンバーヘッド。 だから 周りから『モッジャ』と呼ばれていた。 「俺と章護の家、隣りだし仕方ないけどな」 そう 『俺』と章護の家は隣にある。 母親が音楽関係で仲がいいのもあり 『俺』らは赤ん坊から 一緒にいる事になる。 『俺』の母親が歌で 章護の母親が伴奏者。 『俺』にはさっぱりわからないが 音楽社会の中では ちょっと名が通るらしい。 章護はそれの影響か トランペットを吹き始めた。 『俺』は俺の母親にピアノを 教わっていた。 母にとって 息子と一緒に演奏会に出たかったらしい。 が 子供に上手くなってもらうがために ついスバルタ教育になってしまう というのしょっちゅうある話だ。 『俺』の母親もそうだった。 毎日がピアノピアノ… それが嫌で 少年野球のクラブに入り 野球に没頭し ピアノを避けた。 まぁ 野球は元々好きだったから 楽しくできたけど。
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