cauchemar.1 朱を奪う紫

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  「クラーヌが、生きてる?」  少年の目に写る妹の姿。それは生きている状態とは到底思えない。しかし、その言葉は少年の壊れかけた心を歪ませるには充分だった。 「あぁ、生きている……」  その言葉に少年が表情を輝かせると、犯人は歪んだ笑みを少年に向ける。くぐもった笑い声が、口元から漏れていた。 「クラーヌ、クラーヌを助けなきゃ」  そう言葉を繰り返し少年が妹に手を伸ばした瞬間、犯人は少年の前に立ち塞がる。 「魔痕(シカトリス)を簡単に信用するとはな……これだからお前らは面白い」  犯人は少年の右手を勢いよく踏みつけた。苦痛に表情を歪め、少年が犯人を睨み付ける。 「離せ! 僕はクラーヌを助けるんだ」  右手を踏まれたまま、少年が叫ぶが犯人はそれを受け入れようとはしなかった。 「守れもしなかったクセに何を抜かす。大人しく見ていろ。此が我々(シカトリス)だ……!」  三日月の口から放たれる甲高い笑い声が、少年の耳にこびりついて離れない。一際強い風が窓から入り込み、犯人の髪を舞い上げる。  それに呼応するかのように、犯人の身体から黒い“何か”が伸び、妹を丸飲みにした。  黒い“何か”が犯人――其れの身体に戻った後、妹がいた場所には妹の姿は無い。  少年は一瞬の出来事に息をするのも忘れ、思考を巡らせる。  “何”が妹に“何”をしたのか、妹が“何処”にいったのか――とても理解が出来ない。  
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