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空は、よく晴れていた。
どこまでも続く道。先は見えず、また後ろさえ途切れが見えない道。
あまり広さはなく、やっとのことで馬車一台が通れる程度の道。周りには大きな木が、青々とした葉をめいっぱいに広げている。
どこにでもありふれている田舎道。少女はそこで立ち止まっていた。
少女は、空を愛でていた。
真っ青な空は少しの雲をその懐に抱え、のびのびとしていた。春のような憂鬱さはいつの間にかなくなっている。日差しが強い。本格的な夏は、そこまで来ている。
「良い、天気だ」
少女はぽつりと呟く。十五・六歳程の見た目にしては低い声。感慨深げなその言葉は随分と大人びている。遠い空を見つめながら、少女はもう一度同じ言葉を繰り返す。太陽は輝くことでその賛辞に答えた。
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