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「瞳子と由紀は、有くんに生徒会に入らないでってお願いすればいいって言うんだけど、なんか言っちゃいけない気がして」
普通は他校の内部事情など知らない。
智樹は大学時代の友人から聞いて知っていたのだが、瞳子や由紀が知っているとは思えない。
智樹は、ふっと息を吐くと、消沈している千尋の頭を撫でた。
「ちーが正解。それは言っちゃいけないことだなー。
藤星で生徒会に入るって事は、将来役に立つ事なんだ。
大学進学にも有利だし、就職する時も有利。
ちーが言えば有はきっと辞退するだろうなぁ。
けど、それは有の未来にちーが水を差すことになる」
思わぬ情報に、千尋は驚いた。
と、同時に有に余計なことを言わなくて良かったと胸を撫で下ろす。
「なぁ、ちー。毎日会えるなんてそうないことだと俺は思うよ?
社会に出れば特にそれは顕著だ。
このまま、有と付き合っていくなら、二年後もっとお前等は会えなくなる。
ちーが有と同じ大学に行けるならともかく、確実に違う大学になるんだから、当然だろ?」
真剣に耳を傾けていた千尋は、何げに貶された事に気付いて、顔を突っ伏したまま、眉を寄せた。
「そんな事で凹んでたってしょーがない。
その分、会ったときにイチャイチャしとけ」
撫でていた手でポンと一叩きすると、智樹は千尋の顔を上げさせた。
「絶対辞めろって言うなよ?
その変わり、淋しいって事は伝えていいから」
「いいの?」
「ああ、いい。ちゃんと我慢するってのも言えよ?
男は健気な女に弱いんだから。
そんでもって、その分、智くんに構ってもらう、て付け加えとけ」
言われた有を想像して、にんまりと笑む智樹に千尋は苦笑する。
「春休み終わったら二年生になるんだから、ちーさんはもうちょっと頑張らないと入れる大学なくなるぞ?」
そう脅されて、千尋は問題集に取り掛かるのだった。
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