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「ヤンキー娘は迷路が苦手」
普段は騒がしい教室も、今は廊下から声が聞こえるのみで静かだった。前の授業も終わり、ほとんどの生徒が次の体育のために移動している。
教室に残っているのはもう数人で、その彼女らは誰も口を開かなかった。集まる視線の先、そこには授業が終わったことも気づかずに眠り続ける生徒がいる。
委員長は教室を空けるとき、教室を施錠する決まりとなっている。その為には全員に教室から出てもらわなければならないのだが、その寝ている生徒を起こす勇気がなかった。起こさなければならない、でも、起こしたら何をされるか・・・。そう思うと、自然と起こさないように音を立てないようにと口を閉じてしまうのだ。
結局、委員長が心配で残ってくれた友人たちと共に見守ることになってしまった。できれば、自分から起きてくれることを祈って・・・・。
だが、そんな願いもむなしく彼女が起きる気配はない。予鈴までもうあまり時間もないのだ。意を決したように一人が口を開く。
「あの、佐々木君。園田さん、起こしてくれない?」
「え?」
悩んだ結果、やはり話しかけられず、頼んだのは教室で一人本を読んでいた人畜無害そうな少年だった。
「起こすんですか?」
「お願い。」「園田さん、起きて下さい。園田さん。」
「うるせぇな、なんだよ。」
肩を揺らされて、眠そうに上げた顔は一目で分かるほど不機嫌そうだった。
「次、体育ですから外出ないと。」
「私は眠いんだ。サボるからいい。」
そう言うと、不機嫌そうな表情のまま、また机に突っ伏す。あまり強引なことが苦手な佐々木だが、今は委員長達にお願いされてしまっている。引くわけにもいかず、もう一度起こしてみる。
「教室閉めちゃいますよ?」
「別に閉めなくたっていいだろうが。」
「学校も少々物騒で物が無くなるって事がたまにありますから。」
「・・・ったく、眠気が覚めちまった。分かったよ、出てけばいいんだろっ。」
だるそうに体を起こすと、ガタンとイスを響かせて立ち上がる。
「ありがとうございます。」
「おら、委員長!他人に任せてんじゃねぇぞ!」
教室から出る間際、委員長を一睨みすると、そのまま教室から出て行ってしまった。
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