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奴隷地域にある学校で、それなりの知識を教え込まれたナミイチは頭が良い。 しかし、【幸せ】についてなんて学校では教えてくれなかった。 当たり前だ。 奴隷地域にそんな単語は似合わないし、そんなものはないはずなのだから。 まぁ、それなりの自由を与えられ、役目さえこなしていれば何不自由なく暮らせる場所だが。 それでも【幸せ】を知る人は少ない。 それが何なのか、どんな形なのか…。 学校で習うものではない。ナミイチには、習ったことしかわからなかった。 「ナミちゃんは幸せ?」 「…さぁな」 「そっか、ちょっと残念」 ニニコは、寂しそうに笑う。 嘘でも幸せだと言っていれば、彼女は救われたんだろうか。 とナミイチは少し後悔した。 ニニコの手は、ナミイチの手よりも小さい。 ナミイチは、色々な要因があって成長が遅い。 年齢の割に若い姿のせいでよく馬鹿にされたものだ。 そんなナミイチの手でさえも、さすがにニニコよりは大きい。ついでに、ニニコの手は柔らかい。 「私、ナミちゃんの手、好きだよ」 「…へぇ」 こんな人殺しの道具のどこがいいのか、ナミイチは疑問に思った。 彼は、自分を人を殺すための武器にしか過ぎないと考えていたし、それが当たり前だと思っている。 いくらなんでも、自分の手が好きだとは思えないのだ。 「物好きだな」 「だって、ナミちゃんの手は温かいもん」 「へぇ」 「それに…いつも私に元気をくれるの」 「そうか?」 「うん」 ナミイチにそんなつもりは全くもってない。 ニニコは本当に物好きだな。とナミイチは頭の中で反復した。 「お前の手は冷たい」 「もう、冬だもん」 「そうか」 「私の手、すぐ冷えちゃうの。だから、ナミちゃんが羨ましいな」 「馬鹿言うな」 ナミイチは、ニニコには自分のような手を持ってもらいたくないと思った。 いくら温かくったって、中身は冷たく凍っているような…そんな手なのだから。 「お前はお前でいいんだよ」 「そっか、そうだよね」 「あぁ」 どう納得したかわからないが、ニニコは大きく頷いている。 特に何か大事なことを言った覚えはない。 ナミイチは、ニニコがそんな反応をするとは思っていなかった。 「ふふふ~」 「…」 「ふふ~ん」 「うるさい」 「ぶー」 こいつ…自分の立場わかってるのか? とナミイチは大きくため息をついた。 ナミイチは、本当にニニコといると調子が狂う。 いつもの調子では彼女には通用しないのだ。 .
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