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しばらく歩いていると、ニニコの足取りがゆっくりになっていることにナミイチは気が付いた。 何かあったのかと、彼はニニコを見やる。 そこで、彼はふと思った。 「まさか…眠いのか?」 「そ、そんなことないよ…」 と、言いながらニニコは目を擦っている。 “眠い”というオーラが彼女のまわりに漂っているのが、ナミイチにはわかった。 「背負ってやる。お菓子の返しだ」 「ん~、いい」 「…素直だけがお前の取り柄だぞ」 「うう…お願いします」 ナミイチたちは一度歩くのを止めて立ち止まる。 ナミイチは身を屈めて、ニニコを背中に乗せると、また歩きだした。 彼は人一人の重さなどないかのように身軽そうだ。 「あ~、ナミちゃんの匂い」 「当たり前だろ」 「何か…幸せ」 「なんだそれ」 ニニコの気の抜けた声に、ナミイチは思わず苦笑をもらす。 ただ背負っただけなのに、幸せだなんて、【幸せ】はそんな簡単なものなのかとナミイチは思った。 「幸せ…ねぇ」 「そう、幸せ。いつか…ナミちゃん、にもわかる、よ」 「そうだといいな」 ニニコの眠そうな声を聞きながら、ナミイチはぼんやりと呟いた。 いつか【幸せ】がわかったら、ニニコにも教えてやろう。【幸せ】をニニコと半分こにすれば、きっと笑ってくれる。 そうナミイチは思った。 彼は歩きながら、また月を見上げる。細い三日月の微かな月光が目にしみた。 まるで、ニニコみたいだとナミイチは、柔らかく微笑んだ。 儚くて、自分より小さく見えるのに大きな存在で…いつだって自分を照らしている。 ナミイチはそう思いながら、不思議なむず痒いような気持ちになって、目を細めた。 それが【幸せ】なんだと彼は気付かない。 「おい…着いたぞ」 「う~ん」 「歩けるか?」 「うん」 ニニコを背中から降ろしながらナミイチが言えば、眠りの中にいる声が聞こえた。 「じゃあな。段差、気を付けろよ」 「うん…また、ね」 そう言ってニニコは部屋へ戻ろうとした。 けれど、その途中で彼女の足がとまる。 ナミイチが首を傾げた。ニニコの様子は明らかにおかしい。 ナミイチは、寝呆けたのかと、声をかけてみた。 「ニニコ?」 「ナミちゃん…これ」 消え入りそうな声。 その声は、眠気は覚めているようだった。 ニニコの指差した先には、白い紙が一枚…。 ナミイチはそれに目を見開いて、息を詰まらせた。 その紙が意味することを、ナミイチはよく知っている――― To be continued...
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