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まるで神気を感じたような気がしたのだが……それは気のせいだったのだろうか。
改めて見てみると、目の前の妖怪に特別な部分は無いように思える。
「さぁて道案内してもらいますよ」
「仕方ないですね」
封魔陣のダメージを大して感じさせぬ所作で門番は肩をすくめ、そして館の扉を開く。
重々しく扉は開かれて、目に飛び込んできたのは濃密な紅。思わず目眩がしそうになって、私は目頭を摘んだ。
「今日でこの館への来訪者は二人目です」
「私以外にも、ここを誰かが訪れているの?」
「先程から黒い魔法使いが」
「へぇ、成程」
予想外だった。黒い魔法使いとは魔理沙のことだろう。
まさか先を越されていたとは。真っ赤な、まるで血に染まったようなロビーを見渡しながら、私は後ろを振り返る。
「で、私はどう進めばいいのかしら?」
「その廊下をまっすぐに進んでもらえれば、手品師に出逢うはずです。彼女なら、この異変を止める方法を知っていますよ」
門番の含みがありそうな声。先に何があるのか問いただしたところで、何も進展はしないだろう。だが進むべき方向が分かったのだから私は進むしか無かった。縁側で平和に茶を啜るにも大変な労力が必要なものだ。
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