二章 霧雨魔理沙[Ⅰ]

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「あんたね。寒いのは」 「暑いよりはいいでしょう?」 「寒い奴」 「それはなにか違う……」     ミニ八卦炉に注ぎこむ魔力を増加。同時に魔力を練り上げ、目の前の氷精を打ち落す算段を組む。  こんな寒さはゴメンだ。下手に戦いを長引かせれば、間違いなく私の体に限界が来る。  だからさっさとケリをつける。そもそもまだるっこしいのは、私の性に合わない。 「氷精、アンタいっぱいいっぱいなんだろ?」  言いつつ、私は練り上げた魔力を開放する。  魔力は空に輝く星の形へ。  湖上には満点の星空が顕現する。それは願いを叶えると言われる流れ星。  私はここに宇宙を再現する。 「舐めるな!アタイは最強なんだから!!」  氷精を中心に、先程とは比べものにならない爆発的な冷気が拡散する。  広がった冷気は大気さえも凍らせる。  人の、生物の存在を根源から否定する絶対零度の世界。冷気が明確に敵を撃つために変じたのは、鋭利な氷柱。  幾百もの氷柱が私へとその切っ先を向ける。   「魔符 スターダストレヴァリエッ!!」 「雹符 ヘイルストォームーー!!」  空から地表へと落ちる流星群。  迎え撃つのは統制の取れた氷柱の大群。  あの氷柱はあくまでも自然現象だ。なにせ氷精も自然の一部なのだから、氷精が創りだしたものは自然の一部となる。  対して私が練り上げた星々は、あくまでも魔術。  世界を捻れさせて望みを達成する左道の技。紛れもない不自然。  この湖が望むのはどちらだろうか。考えるまでもない、氷精の技をこの湖は自然な流れとして支援する。この冷気は氷精に力を与える。   「相殺できないか」  星と氷柱が激突し、更に先へと進むのは氷柱。星々は徐々に数を減らしているが、氷柱はそこまで数を減じた様子はない。  力量差とは考えたくない。コンディションや地脈という要素が魔術の行使には大きく影響するのだ。これが魔法の森での戦いであったら私に勝機はあったのだろうけど、生憎ここは氷精のホームグラウンド。  流石に不利は否めないか。
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