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私はただ抱きしめて欲しいだけだったの。
甘いお菓子もいらなければ、美味しい紅茶もいらない。ただ貴方の腕で私を抱きしめてくれたのなら、耳元で愛を囁いてくれたのだったら、私はこの紅い地下の牢獄で幾星霜の時をも重ねることができたでしょう。
だけど分かってしまった。いえ、分かっていた。だって姉妹だから。
私はきっとお姉さまの事を一番良く理解してる。
貴方の傷も、貴方の悲しみも、憎しみも。
そしてお姉さまが私のことをどう思っているのかも。
分かっているのに、手に入らないと理解出来ているのに求めてしまうから、きっと限界だったの。私がこうなったのは誰のせいでもない。
運命。この感情を抱いた時からそうなることは分かっていた。
何かを修復するのはとても難しい。だけど壊すのはとても簡単。重く堆積した数世紀の歴史でさえも、一瞬で崩れてしまう。
世界は脆いと感覚で理解できてしまうから、私自身がどれほど脆いかも分かる。
それはとても怖いこと。
「あは……あははは」
壁一面には紅い色。
ぬるぬるぴちゃぴちゃと、牢獄の床には狂気が堆積している。その匂いを嗅ぐたびに、紅い色を目にする度に私の脳は焼け切れるような痛みに襲われる。
それを忘れたくって私はもっと、戻れないほど深い場所へと堕ちていく。だけど途絶えることのない失墜感の中でも私は絶対に狂わせては駄目な部分を持っているの。
がんじがらめの狂気の中でもお姉さま。レミリア姉さま。
貴方のことだけは、大好きだから。
その感情だけは、絶対に狂わないから。
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