一章 博麗霊夢[Ⅰ]

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1  私は特に何か変化を望んではなかった。  現状に不満がないのかと言われれば、それは一つや二つやそれ以上に湧き出て来るが、人間どのような暮らしをしていても大抵は不満を持つものだ。  だから私にとっては、こうやって縁側でゆっくりと茶を啜っている生活が最も不満の少ない生活なのだ。  つまり私は今の生活を気に入っていた。  朝食を食べて、境内の掃除をして、茶を飲んで、昼食を食べて、昼寝をして、妖怪をいたぶって、夕飯を食べて寝る生活に。  もう少し賽銭が多かったらいいとか、日々の食事にもう一品何かを加えたいとか、境内の雑草がまた伸びてきたとか、たまに来る白黒の魔法使いが煩いとか色々な不満はあるが、それは微々たるもの。積極的な改善に打って出るほどのことではない。  自慢ではないが私の腰は重たいのだ。とても安定感がある。  変化を望まない私は、ここにある世界を変えることをあまり好まなかった。    だが厄介なことに世の中には現状を変えたいと切望している輩は多く居て、変革の過程で何かしらの異変を発生させている。
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