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父さんがおかしくなったのは、そもそもいつからだったのか。
……ああそうか。母さんが死んでからだ。
父さんは、母さんが死んだという事実が心の奥では受け入れられなかったんだ。
だから、母さんに似た俺を、代わりにしたんだ。
†
「千鶴」
「……何ですか」
「久しぶりに、父さんと一緒に寝るか」
言われて、体が強張るのが分かった。
……また、あんなことをされんのか……?
「……遠慮して、よろしいでしょうか?」
父さんの顔は笑顔のままなのだが、纏うオーラが殺気を帯びたものへと変わった。
この、殺人的な威圧感こそが、中小企業を大企業へと変えた要因の1つ。
そして、俺を凍り付かせるものの1つ。
「まぁそう言わず。父さんだって久しぶりに誰かと寝たいんだよ」
いつもなら、これで頷いていた。これ以上逆らったら、何をされるか分からないから。
けど、今日は恐くても首を横に振った。
せっかくできた友達を失いたくなかったから、こんなおかしいことに逆らおうと思えたのだ。
「……嫌だ。俺はもう……あんなことは……」
「……聞き分けのない子は、嫌いだとお前は知っているだろう?」
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