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それにねと千春は笑みを深くする。
「――お兄ちゃんが泣き叫びながら犯されてる様、あたしも大好きなんだもん」
……絶望とは、このことを言うのか。
俺は崩れ落ちるように座り込みながら、顔から血の気が引いて行くのが分かった。
守ろうとしていた妹は、そもそも俺の味方ではなかった。
心のよりどころとしていた妹を守るという行為は、意味のないものだった。
これが、絶望以外の何になる。
「……う……そだ……」
声が掠れる。更に出している声は平坦で、自分のものとは思えない。
父さんは、そんな俺にのしかかって来て、俺の服を脱がせる。
「嘘だ!嘘だと言ってくれよ!千春!千春ー!!」
千春に向かって手を伸ばすと、千春は俺の指に自分の指を絡めた。
「あは。やっぱりお兄ちゃんは、泣き叫んでる顔が1番綺麗だね」
俺の瞼にキスすると、千春は革の鞄から黒い財布を取り出し、1万円札を4枚抜いた。
そして、それきり俺に話しかけることはなく、出て行った。
……俺は今まで、何をしてたんだ?
父さんに凌辱されながら、俺は頭の隅でぼんやり考える。
思考と肉体が切り離されたその世界での思考は、何処までも冷静だ。
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