雨の日、心の在処

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俺は走っている。 どこかで見たことのあるような道だが、どこで見たのか、知ってる道なのか、テレビで見た道なのか。 いずれにせよ、走っている"感覚"しかないのだから、これが夢だとすぐに理解できた。 走っているのは、防波堤沿いにある車二台がギリギリ通れる位の広さの道。 最近(とは言うものの、夢の中なので"いつ"から見て最近なのかはわからない)舗装されたらしく、まだ新しいアスファルトが何かを訴えかけてくることもなくただ延々と続いていた。 しばらく走り続けた。 夢の中の俺は体力がないようで、始めのころに比べてペースも落ちてきているし、時々座り込んで息を整えていた。 顔を上げ、また走り出そうとする。 身体中が汗ばんで、限界はもうすぐそこだ。 ふと、視界の端に何かを捉える。 見た感じでは小学校低学年と言ったところか。 ただ、その見た目に目を引かれた。 服装はいかにも小学生らしい白いワンピースで、肩甲骨あたりまで伸ばしたやや明るい色の髪とよく合っていた。 "背中のあたりだけは"。 少女(髪の長さと服装的にはそうだろう)の見た目で最も目を引くのは、頭に被った"黒い野球帽"だった。 白いワンピースを着て、明るい色の髪を風になびかせる少女の風貌に、それは酷く違和感を覚えた。
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