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船の揺れは、姉達がどれ位で船が傾くのか、丈夫さはどれ位か、衝撃を与えて確かめていたのだった。
「やっぱり、あれ位じゃ倒れないわね。」
「そうね…残念だけど。
人も騒ぐけど、外に出て来るのは少しだけだったし…。
悔しいけど、魔女の言った通り、セイレーンになっておびき出すしか方法は無いのかしら…。」
「もうじき人魚姫が王子を助けた時刻が近付いてくる。
チャンスは一度きり。
何が何でも成功させなければ…。
それじゃあ…、私は貴女達と一緒に泳ぐのも、これが最後ね。
上で私が歌ったら、船から二人が出て来るのを確認して揺らすのよ!
ポセイドンの起こす波風で船は傾き、海に投げ出されるわ!
他の人間は無視よ!!
あの二人だけに神経を集中させて引きずり落とすのよ!
そして、女は海の中を皮膚がちぎれる程に連れ回し、息絶えたら魚の餌に、王子は魔女の元に…。」
1番年上の姉は作戦を確認すると、一緒にいた人魚達に別れを告げ、魔女から貰った薬をいっきに飲み干した。
「う…ぐ…ぐぐ……」
薬が喉を通過した感覚と同時に、全身に痛みが生じ始める。
すると、見る見るうちに、下半身は鱗が剥げ、足には羽毛が生え、二本の鳥の足になっていった。
「お…お姉様、大丈夫!?」
心配そうに見つめる中、今度は腕が大きな真っ赤な翼に代わっていった。
「あとは海が荒れ狂うだけ…。」
それぞれが所定の位置に配置し、静かに時を待った。
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