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「王子様、私、恐いわ!
やっぱり早く陸に戻りましょう!」
王子が部屋に入るなり、女は駆け寄り訴えた。
「…そうだね。
君がこんなにも恐がっているんだから、もう陸へ引き返す事にしようか。
本当なら、もう少しで月が真上に来る時刻に花火を上げて海にも祝ってもらうつもりだったんだが…。
しかたない……。」
王子は女の言う通り、再び船長の元へ行き、陸に引き返す様に伝えた。
「それが…全く舵がきかないんです!
雲行きも怪しくなってきたので、陸に向きを変えておこうとしたのですが…。」
船長の言葉で、王子は上を見上げと、先程まで晴れ渡り、月が見えていたのに、徐々に雨雲が月を覆い隠し始めた。
「…あの時と同じだ!
海が…海の神が怒ってるんだ!!」
近くにいた船員が叫んだ。
「誰か、海の神を怒らせる様な事をした奴がいるんだ!
俺が昔乗っていた船でも、海を汚して怒らせた奴がいた!
今回は一体誰が…!?」
その船員はガタガタと体を震わせ、必死に祈り始めた。
「とにかく…こちらは何とかしますので、王子は船内へ。」
船長は「気にせずに」と王子を船内に誘導した。
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