第1章

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高い波が船体に当たり、水しぶきが部屋の窓に叩きつけられる。 同時に強い風も吹き出し、船を更に揺らし、激しく揺れ動く。 その風にのって、王子が聞いた歌声はますますはっきりと聞こえてくる。 「キャーー!! 王子様、恐いですわ!!」 女が床にふさぎ込み、王子に必死に助けを求めた。 だが、王子の耳には歌声しか聞こえていないのか、女には見向きもせず、ドアを開け、声のする外に向かっていった。 「えっ?王子様!? 私を置いて何処へ?王子様!!? キャーー!!」 女は恐る恐る立ち上がり、窓際から王子が向かう先を見つめていた。 「なんて美しい…。 先程の声は空耳ではなかったんだ。 一体、何処から聞こえてくるんだろう…? この声の持ち主はどんな人だろう…?」 フラフラと船内を歩く王子を見かけた船長と船員は、慌てて王子に駆け寄り、部屋に戻る様に伝えた。 「王子!危険です!! 天候がだんだん酷くなってきてるので、部屋にお戻り下さい! 海に投げ出されます!! それに、セイレーンの歌を聞いてはいけません!! 今、耳栓を渡しますので、早くこれをして部屋へ!!」 船員達は、急いでロウソクを垂らして耳栓を作り、セイレーンに惑わせられない様にと王子に渡そうとした。 だが、王子はその手を振り払い、まるで取り付かれたかの様に歌声のする方へ…。 船員達の静止を無視しフラフラと歩く。
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