第1章

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「わ…私…泳げなのよ!! ちょっと!誰か…誰か助けて!! 私を助けなさいよ! 私を誰だと思っているの!?」 女はバタバタと手足を動かし、叫びながら回りに助けを求めた。 だが、荒れ狂う海では、誰もが生き延びようと必死で、女を助ける程の余裕がある人など居なかった。 「私達が、あなたを陸まで連れていってあげましょうか?」 女は助けが来たと思い、安堵し、声のする方へ視線を向けた。 だが、目にしたのは怒りに満ちた人魚達がニヤリとしながら並んでいた。 「ただし、この海を楽しんでからね。」 そう言うと、人魚達は海に潜り、女の前から姿を消した。 「えっ!?ちょっ…人魚!? な…何?何処へ消えたのよ!!? 私を助けるんでしょう? 何でもいいから助けなさいよ!」 女が慌てながら視線を消えた海に向けると、人魚達がニヤニヤと笑いながらいる。 「!!?」 その瞬間、女は人魚達に足を引っ張られ、海深く潜った。 一瞬パニックになって、状況が解らず焦る女。 自分の身が危険に晒されていると察したが、時は遅く、海深く潜った今、慌てて逃れようと体を動かすが、水圧で思う様に動かない。 諦める様に、女は息を堪えてなされるままいたのだが、物凄い勢いで泳ぐ人魚に引っ張られるうちに、だんだん息も苦しくなり、力尽き、しまいには海藻の様にゆらゆらと、揺れ動くだけになった。
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