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「えっ…いや……あの時は意識が朦朧として……。
あっ、でも…そうだ!!
声……声なら覚えてている!
なんとも可愛らしい声だった…はず…。」
王子の答えに、人魚達は苦笑いした様に、それでいて哀しそうな表情を浮かべた。
「…声…か………。
王子が覚えていた、唯一の、あの子と王子を繋ぐものは、声だったなんて……。」
「それじゃあ、あの子がいくら王子に『あの時助けたのは自分ですよ』って目の前に現れても、話せないんじゃあ……。」
人魚達の話を聞いて、王子は『目の前に現れる』『話せない』と聞いて、しばらく連想し、踊り子の事を思い出した。
だが、同時に疑問が…。
「えっ!?
でも、僕を助けたのは………。」
「あの女は、その時助けた、心配そうに王子に話かけた声だったの?」
「あんな甲高い、すまして気取った声だったの!?」
その言葉に、王子は記憶を手繰りよせるかの様に考え込み、思い出し、顔を曇らせた。
「いや…違う……。
僕を助けてくれた女性は、とても可愛らしい、透き通る声だった…。
そうだ…あんな声じゃなかった!
何で僕は忘れてたんだろう…。
話す事も出来ないって…あの踊り子だったのか?
だったら、あの踊り子は、あの時助けてくれた女性だったんだね?
彼女は?君達、彼女を知っているのか?
彼女は何故話せなくなったんだ?
彼女は今、一体何処に?」
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