第1章

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「あの子は私達と同じ人魚…と言っても、私は今はセイレーンだけれどね。 ある日、あの子は人間を嵐の海で助けたと言っていたわ。」 「それでは…やっぱり…! 本当の命の恩人の彼女は目の前にいたのに、僕は気付かず……。 でも、何故彼女は…」 王子の言葉を遮り、セイレーンは話を続けた。 「その日から、あの子は苦しんだわ。 どうしても助けた人間の事が忘れられなくて、毎日、毎日…。 『自分も人間だったら、会いに行けるのに、この体では会いに行けない。陸にすらあがれない。』って。 なにより、『この姿では驚かれて嫌われてしまう』ってね。 そして、悩んだ末、彼女の自慢だった声と引き換えに、人間になる事を選んだのよ!」 「でも、何故そこまでして彼女は僕に会いたがっていたんだ?」 王子の質問に、セイレーンは、王子の首を大きなかぎ爪でつかんだ。 「『何故?』ですって!? あの子は助けた人間に…あなたに恋をしたのよ!! こんな愚かでマヌケな人間…あの子が可哀相すぎるわ。」 ますます王子の首に爪が食い込み、うっすらと血がにじんできた。 「…っ……!!」 苦しくなった王子は、必死に首からかぎ爪を離そうとした。 しかし、力が強くてびくともしない。
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