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「あの子は私達と同じ人魚…と言っても、私は今はセイレーンだけれどね。
ある日、あの子は人間を嵐の海で助けたと言っていたわ。」
「それでは…やっぱり…!
本当の命の恩人の彼女は目の前にいたのに、僕は気付かず……。
でも、何故彼女は…」
王子の言葉を遮り、セイレーンは話を続けた。
「その日から、あの子は苦しんだわ。
どうしても助けた人間の事が忘れられなくて、毎日、毎日…。
『自分も人間だったら、会いに行けるのに、この体では会いに行けない。陸にすらあがれない。』って。
なにより、『この姿では驚かれて嫌われてしまう』ってね。
そして、悩んだ末、彼女の自慢だった声と引き換えに、人間になる事を選んだのよ!」
「でも、何故そこまでして彼女は僕に会いたがっていたんだ?」
王子の質問に、セイレーンは、王子の首を大きなかぎ爪でつかんだ。
「『何故?』ですって!?
あの子は助けた人間に…あなたに恋をしたのよ!!
こんな愚かでマヌケな人間…あの子が可哀相すぎるわ。」
ますます王子の首に爪が食い込み、うっすらと血がにじんできた。
「…っ……!!」
苦しくなった王子は、必死に首からかぎ爪を離そうとした。
しかし、力が強くてびくともしない。
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